2月下旬のサファリダイヤリー

2月14日、

蒼い空と茶色い草原

3週間ぶりにマサイマラへ戻ってきた。
予想通り草丈が伸びていた。茶色いイネの穂とまだ下から伸びてこようとする青い草が微妙なグラデュエーションを作り、風で揺れると草原の色を変えた。

[16:45,セレナ]
さっそくサファリへ出かけてセレナのライオンとチーターに会った。
一頭のメスライオンは立ち上がると、頭を下げて背中を波たたせ、毛玉を吐いた。獲物を食べたときや身体を舐めたときに飲み込んでしまった獣毛を胃の中でまとめて時々吐きだすらしい。もっともこの動作はイヌやネコの肉食獣もすることだけど。

それ以外の場所ではあまり動物が観られなかった。
この日は一日中曇っていた。

メスライオンが毛玉を吐き出す瞬間。苦しそう。

この親子連れチーターはこの後めっきり観られなくなった。


15日、
オロオロロゲートで以前「ギラレアンチポーチング・ポスト」で働いていたレンジャーに会った。彼は密猟者取り締まりの現場で働いていた。その任期6カ月が終了し、今度はこの保護区のゲート管理に配属されたという。
ずっと世間から離れた生活をしていたのでそのお疲れを兼ねて「良かったね」というと彼は笑っていた。僕らのドライバーは、
「あそこの仕事も悪くはないさ。だってお金使わずに済むのだから」
と言った。なるほど。

[17:15,セレナ]
今日は日差しが強い。
セレナまで行って数台の車とネコ科を探すが、誰も見つけられない。理由はこの草丈だ。
きっと何処かで寝てるはず。そして僕らの車が一番最初にメスライオン3頭を見つけた。まったく運が良かった。ゲストのみんなはどうしてここにライオンがいるのがわかったのか、不思議そうだった。無線で連絡すると、他の車が大勢やって来てライオンを取り囲んだ。第一発見車として、ちょっと自慢気な立場を味わった。
そんなことは気にせず、メスライオン達はこの暑さの中で睡眠を貪り続けていた。

ライオンが寝ころんでしまうと本当に見つけにくい草原

[17:53、メインロード]
帰りぎわ、別のライオングループを見つける。
オスライオンを見たがっていたゲスト達は、まだタテガミが生揃ってないけど凛々しい顔をした若オスに会えて嬉しそうだった。ドライバーの天才的な目の良さに感動していたが、今回のライオンはボクが見つけたのだ。まあ、だまっとこう。

たまたまアリ塚の上にいてくれたので見つかった。

それにしても、3週間も空けるとマラの様子が一変しているのに驚く。一帯の様子を把握するのにしばらく時間がかかりそうだ。
とりあえず、僕らのドライバー達から情報収集をはじめた。1人のドライバーは、半日サファリで東のオルキヨンボまででかけ、クロサイの「ハナ子」に会ったそうだ。しかもハナ子は男連れ(!)だったという。うーん、会いたい。

17日、
早朝サファリに出かけるが、途中でサファリカーが故障した。結局、メインロードを往復しただけだったので、ゾウしか会えなかった。乗っていたゲストには申し訳ないことをした。
良かったのは、東の空から日の出と西の空に満月が沈むのが同時に観られたことだ。どちらも大きくて、なかなか神秘的な現象だった。


18日、
[6:45、ゲート]
「木登り好きメスライオン」の子供達が、僕らの前に現われてくれた。
最初は車の音に恐がって茂みに隠れていたが、エンジンを切って静かにしていると、おそるおそる顔を出し、ママライオンの元へ行き、2頭でじゃれあい始めた。
この2頭の子供は2,3ヶ月前に生まれている。今回ようやくボクも写真に収めることが出来た。

母親の庇護のもと、車を気にせずに遊ぶようになった。

[6:41、セレナスワンプ]
コウノトリが「渡り」で飛来し始めていた。季節的にマサイマラへやって来ることが分かっているが、いったい彼らは何処から来たのだろう。西アフリカのコウノトリはヨーロッパまで飛来するという。誰か調べている研究者はいないのだろうか。

[8:00、コーナマローリー]
この付近をナワバリにしている2頭の兄弟オスライオンが歩いている。ちょうど正面に来たのでうまく写真に収めることが出来た。じっくり眺めるほど、この兄弟は顔が似ていると思った。

まるでコピーしたような兄弟だ

[8:37、ボーダー]
国境まで足を伸ばした。
セレンゲティへ近づくに連れ、草丈の塩梅が草食動物の集まりそうなちょうどいい長さだ。実際、ここには羚羊の仲間が沢山集まっていた。ただしボクの住むロッジから遠すぎてなかなか来れるところじゃない。
ここまで来た目的は、ヌーの子供が生まれているか確認することだったけど、僕らの観た30頭ほどの個体にはまだ見受けられなかった。

19日、
東のムシアラ方面へ出かける。
こっちもどこまで走っても草丈が伸びていた。これでは動物を見つけるのは大変だ。草丈が長いだけでなく、乾いていて草原は茶色一色だった。

[17:34、ゴーチ前]
夕方5時を過ぎても、まだまだ日差しが強い。
いくつかのサファリカーと情報交換するが、誰も目ぼしいものを見つけていないという。
早朝このあたりでチーターを見たというドライバーに従い、僕ら3台のサファリカーは横一列に並び、草原をゆっくり走らせた。おたがい左右の草原に目を光らせる。この方法はある地域に分布する動物の個体数を調べる「ライン・センサス」と同じ方法だ。
そしてみごとにチーターを見つけた。まだ若いオスの個体だった。あまり車に慣れていないらしく、近づくと逃げた。そしてまた草原に寝そべる。寝そべると草に隠れてしまい本当にわからなくなった。

こんなふうに寝てしまったら探すことはほとんど不可能

21日、
6:57に日の出だった。
最近の日の出は、寒い雨季の7、8月に比べかなり遅い。日の入りも夜7時ころで遅く、ついつい野外にいると今何時なのか分からなくなる。

今朝はゲストのリクエストで、チーター探しに出かけた。今日のゲストは午前便の飛行機で出発してしまうため、これが最後のサファリになる。まだチーターに会っていない。
僕らはとにかくメインロードを南にひた走り、タンザニアの国境を目指した。
昨日の情報では、そこだけでチーターが観られたという。他の動物は見かけても、車を止まらせることはしなかった。
ロッジから約1時間半で国境付近まで辿り着いた。ここまでくると草丈が短くチーターの捕食するトムソンガゼルも多い。いかにも居そうな雰囲気だ。僕らは何度も車を停止して、双眼鏡で緑の草原を見回した。
そんな作業を繰り返すが、チーターらしき姿は見当たらない。チーターは行動範囲が広いのだ。国境を越えてタンザニアへ向かってしまったのかも知れない。
確かに南のタンザニア方面へ双眼鏡を向けると、ケニア側より草食動物が沢山いるような気がした。野生動物は国境を自由に行き来できるのに、パスポートとビザがなければそこから先へはなんぴととも進めない僕らにもどかしさを覚えた。

[8:06、ボーダー]
時間が迫る。僕らは諦めて帰るところだった。別のサファリカーが2台停まっているところがあった。もしかしたら、と近づいていった。
あ、ここにいたんだ。
僕らは運良くチーターに会えたのだった。それは2頭の子供を連れた親子だった。このチーター親子は、2ヶ月間ほど確認されていなかったので、きっと今までの間タンザニアで生活していたのだろう。2頭の子供達はオスで、すっかりママと同じくらいの大きさになっていた。
親子はよっぽどお腹が空いていたのだろうか、一心不乱に捕まえたばかりのインパラを食べていた。その口元は血で赤く、目には真剣さが宿っていた。
しばらく観ていたかったが、もう時間がない。僕らはもと来た道をひた走った。けっきょくゲスト達はまともに朝食を取る時間もなく、マサイマラを離れていった。でも大満足してくれた様子で嬉しかった。

この日から、午後になると強い風が吹く。こんな日はしばらく雨が降らないだろう。

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