2月下旬のサファリダイヤリー(その2)


24日、

[15:17、オロオロロ上]
今日も暑い。特に午後のサファリドライブの日差しはじりじりと肌を刺し、何もしなくても体力が奪われるようだ。
10頭のキリンもこの暑さに、1本の木の下で涼んでいた。

湿原をサファリカーで走らせると、草丈がボンネットよりも高いことに気付いた。もうしばらくするとイネ科は繁栄を終え、倒れ、また視界が利くようになるかも知れない。
保護区の南の端で煙が上がっているのが見える。マサイ族の野火が始まったのだろうか。

[17:30、セレナスワンプ]
昨日、ハイエナがバッファローを食べていた水溜まりへやって来ると、そこにはこの辺りに君臨する2頭の兄弟ライオンがいた。
彼らは水の中にあったバッファローを引き上げたらしい。食べれるだけ食べた様子で、息を荒くしながら寝そべっていた。
つまりライオンたちはハイエナを追い払ってバッファローの屍肉を手に入れたのだろう。ライオンはかなりくさった屍肉も食べることができる。特にこの乾季のように獲物が少ない時期は必死だ。
屍肉はでかく、まだまだ食べごたえがありそうだった。これでしばらくライオンは安心して生き延びられることだろう。

暑くても、肉が腐っていても、食べれるときに食べる。
そして今日を生き延びる。


夕方6時になってようやく日差しが和らいできた。


26日、

[16:10、デリシャ]
今日も暑い。
午後のサファリへ出発した。今朝方オスライオンを見た場所へ行くと、まったく同じ茂みの中でオスライオンはひたすら睡眠を貪っていた。僕らのサファリカーが近づいてきてもまったく動じなかった。この暑さだ。何もしたくない気持ちは良くわかる。

[16:25,ムシアラスワンプ]
しばらく乾燥した湿原を進んでいると、アリ塚の上に立つメスライオンが見えた。先ほどのオスのプライドのメンバーだ。あまり食物にありついていないようで、ずいぶんと痩せてしまい皮膚に張り付くようにあばら骨が浮いていた。
この暑い中でも獲物を探しているのだろうか。
たしかこのメスは、いつも彼女の子どもらしき若いオスライオンと行動を共にしていた気がした。しばらくすると、その若オスが何処からともなく現われた。
このメスライオンは、若オスライオンを探すためにこの暑い中アリ塚の上に立っていたのかも知れない。2頭は顔を寄せ合って挨拶を交わすと、いっしょに移動を始めた。

マラ川へ行く。どうやら上流のマウ山地でも雨が降っていないようで、川の水位はかなり低くなっていた。マラ川は年間を通して枯れることはないと言われているが、今はボクの知るかぎりかなり水量の少ない状態にある。この川が涸れてしまったらどうなるのだろう。
マサイマラ国立保護区はマラ川があってこそ多くの生物を養っている場所だ。この水が無くなることは野生動物の生存に関わることのほか、マラ川の水を生活水として利用しているこの地域に住むマサイ族、それに僕らのロッジの運営にも影響が出てきてしまうだろう。

[17:14、マジヤプンダ]
マラ川沿いの森からゾウの群れが現われた。
水浴びをしたばかりに見える濡れた身体をしている。それなのに草原へ出てくると、湿原の水溜まりでまた水を飲み始めた。
[18:00、デリシャ]
サファリドライブから帰る途中、先ほどの茂みで寝ていたオスライオンの様子を見てみる。彼は少しだけ緩んできた日差しにホッとしたのか、茂みの横にある木の下で今度は寝ころんでいた。とにかくこの暑い日々をやり過ごそうとしているかのように、やはりかたくなに目を閉じて動かなかった。

27日、
昨夜、久しぶりに軽く雨が降った。
朝起きると爽やかな霧が立込めていた。ひさしぶりに鼻を刺激しないやわらかい空気を吸った気がした。いつもの
鳥たちの鳴き声も今日ははりきっているように感じたのは気のせいだろうか。

[6:50、ゲート]
半日サファリドライブへ出かけた。
ゲートを過ぎたいつもの辺りで、「木登り好きメスライオン」とその子どもたちが出てきたばかりの日の出で日光浴しようと草原に出てきていた。


[7:12、シエニ]
ちょっとその先では、先日ひたすら睡眠を貪っていたタテガミの少し黒いオスライオンが道路を歩いていた。今朝は打って変わって顔付きは凛々しく、威風堂々としている。涼しい時間帯は活動する気になるのだろう。向かう場所は先ほどの木登り好きメスライオンと子ども達のいるところと思えた。


オスライオンは立ち止まり、風の匂いを嗅いでいる。そして低い声でなんどか遠吠えをした。地響きのようなオスライオンの遠吠えを、僕らはすぐ側で聞けた。きっとメスと子どもを探して呼んだに違いない。


[8:00、ミリマンビリ]
国境へ向かう途中で、別の大きなプライドに会う。
伸び切ったメガルガヤの草原を移動していたのは、7頭のメスライオンと3頭の子ども達だ。
何処かにオスライオンがいるのだろうか、と辺りを見回していると、後方からゆっくりと後を付いてくるオスラインの姿が見えた。さらにその後ろにもう1頭オスライオンがいた。これは先日バッファローの死体を食べていた兄弟ライオンだ。

3週間の休暇を終えて戻ってきたボクは、ようやくライオンのプライドのナワバリ関係が把握できてきた。これからはこの辺りに住むタテガミの黒いオスと木登りメスライオンを含めたプライドを「シエニのプライド」と呼ぼう。そしてセレナ付近から国境辺りまでをナワバリとする2頭のオスライオンと7頭のメスなどで構成される群れを「ミリマタトゥのプライド」と呼ぶことにする。