オスが可愛くみえるとき
ヌーの子供が確認できたのでひとまず安心し、次に何を探そうかと思っていたところ、遠くにサファリカーが沢山停っている場所をピーターおじさんが目ざとく見つけた。
そちらへ向かいながらようやくボクにもわかったけど、なんと7台もの車が同じ場所に停っていた。これは何か「目ぼしい」ものがいるに違いない。反面、他にこのエリアには「目ぼしい」ものがいない、ということでもあるだろう。
そこにはオスメスつがいのライオンがいた。ハネムーン中なんだろう。サファリカーに乗った観光客は、交尾(メッティング)を観るために待っているのだ。
僕らも車を停めて、しばらく様子を見ることにした。
休んでいたオスがむっくりと立ち上がった。お、やるかな…。
オスはメスの傍らに立ち、前脚でメスを軽くつついた。するとメスはガウ!と唸りながら、オスに牙を剥きだした。オスがたじろぐ。どうやらメスは疲れているようで、交尾よりも眠っていたいらしい。周りで見学している観光客から笑いの声が漏れた。
前脚でメスをつついて起こそうとするオスライオン
交尾というものは、普通メスが受け入れ態勢をとらないと成り立たない。つまりオスには交尾をする決定権がないのだ。
オスはしばらく大人しくしていたが、どうにも交尾したいらしい。未練がましくメスのお尻を舐めていた。
そしてまた立ち上がると、今度はメスにアプローチする前にもうぜんとメスの上にのし掛かってしまった。
メスは一瞬とまどった。それでも「横寝」の態勢を崩さない。これではオスは交尾が出来無いだろうと思っていたが、そのまま交尾中特有の低く長い声をあげながら腰をスライドし、果ててしまった。
交尾が始まった。オスは軽くメスの首筋を噛む
ボクもピーターおじさんも顔を見合わせて驚いた。
「…なんてやつだ!、無理やり交尾しちゃったよ」
「ちゃんと導入できてたのかな?」
「ああ、しかも普通のオスよりも長い交尾だった。たいしたやつだ…!」
確かに普通のオスなら10秒とかからず1回の交尾が終わってしまうのに、このオスの交尾時間は20秒くらいは続けていた。
なんという性欲。このオスはそんなに若くないけど、この性欲力が群れを維持する秘訣に繋がっているのかも知れない。頼もしいかぎりだ。
ボクのデジカメで撮った画像に、面白い表情をしたオスの顔が写っていた。
それは無理やり交尾を成し遂げたあとメスに威嚇されたときで、普通この時オスはメスに立ち向かうような怖い顔をするのだが、なんだかそれはちょっと情けない、「ごめんよ!ごめんよ!」とメスに申し訳なさそうな顔だった。
そう思うのはボクの主観だけど、そう思ってこの顔を眺めると、このオスライオンがとても親しげな、可愛らしい存在に感じるのだ。
交尾終了したあとメスにひっぱたかれそうになるオス。
オスの目がバッテンでかわいい。