3月上旬のサファリダイヤリー(その1)

3月1日、
[マラリアンダ、6:40]
明け方。ハイエナたちがシマウマを食べていた。すっかりお腹の中は食べ尽くされ、ポッカリと穴が開いている。
すばしこいジャッカルがやって来ると、ハイエナの顔色を窺いながら肉の切れ端をくすめた。近くで「順番待ち」をしていた別のハイエナがそれを見ると、ジャッカルからおこぼれを奪おうと追いかける。
ドライバーは自然に死んだシマウマだろうというが、ハイエナたちが自らハンティングした獲物かも知れない。案外ハイエナは狩りが上手いのだ。

バリバリと骨をかみ砕くハイエナ。肉の切れ端をかすめ取るジャッカル


ここはマサイ族の部落に近い。嫌われているハイエナは迫害されるので、早く食べて明るくなる前には逃げてしまわないといけない。

・第2回ハナ子捜索


・ヒョウモンリクガメを発見
(ネイチャーノートへ)
[ハマコップ、10:10]

[ミティヤマジワ、12:20]
陽が真上から降り注ぐ一番暑い時間。その小さな木の下にはサファリカーが4台停まっている。きっとチーターがいるのだ。僕らも駆けつけてみるが、何処にも見当たらない。尋ねると、1台の車の下に暑くてもぐり込んでしまったらしい。


少し待ってみようかと話していると、隣の車のタイヤからのぞく生き物、チーターの子供だった。
やがてママチーターが車の下から出てくると、そのあとを続いて小さな子供達が3頭現われた。

このママチーターには見覚えがある。「クイーンの娘」と呼ばれるこの地域にナワバリを持つ個体だ。ということは、この子供達は昨年の12月に一度観たことのあるあの赤ちゃんたちだ。あのとき赤ちゃんは、まだ目も開いていなくて、車で踏まれてしまいそうな場所に巣を作っていたのを思いだす。あれから2ヶ月後の今、あの子供達がこんなに元気一杯になっているのを観れてうれしい。

生後2ヶ月半ほどになった子供たち。最初にみたときは4頭だったけど1頭死んだようだ。


子供達は、新しい日陰を求めて僕らのサファリカーに向かってやってきた。
「あ、ダメダメ!来るな来るな!」
悪いけど、僕らはすぐにここを出発しなければいけなかったので、声を出して子供達がやって来そうになるのを止めた。
もうすっかり車には慣れてしまったらしい。これからは彼らの成長が楽しみだ。

人工池の水を飲むシマウマ

[ムシアラエアスト、13:11]
ムシアラの滑走路の手前に、「ダイアモンド」と呼ばれる人工的な池がある。もともとは滑走路を造るために土を掘り起こした場所で、わざと深く掘り水を溜めるようになっている。ここはマサイ族の家畜の水飲み場と利用して利用され、また野生動物達にとっても貴重な場所となる。
最初にシマウマが身体を水に浸けながら水を飲んでいた。あとからマサイ族の少年が牛を連れてきたのでシマウマは水場を譲った。
この場所で一日中、定点観察ができたらきっと面白いな、と思う。

2日、
[ゲート、6:50]
さっきまでノンビリと草を食んでいたバッファローの群れが、数分後に1本の木の下に集まりあっていた。
もしやと思い駆けつけると案の定、例の「木登り好きメスライオン」がその木の上に登っていた。

バッファローとライオンは草丈の高い草原を好む。結果、ときどきこういうことがある。


ボクが彼女のこのようなスチュエーションを観るのは、これで2回目だ。
バッファローを怒らすと恐い。ライオンといえど逆に殺されてしまうこともある。ライオンもそのことは良く知っているので、追いかけられると木に登り、このように難を逃れようとする。もちろんバッファローは木に登れないので下でほとぼりが冷めるまで威嚇を繰り返す。
このバッファローの群れはいつもこの辺りに住んでいる。そしてこのメスライオンもこの付近をナワバリとしているので接触する機会が多いのだろう。だったら彼女はもっと注意を払ってバッファローに近づかないようにすればいいと思うのだが、実際には、彼女は機会があればこのバッファローの群れの子供を狩りしようと狙っているのかも知れない。失敗すれば彼女はオトナバッファローによって殺されるかも知れない。それはハイリスクだ。


ところで彼女には2頭の子供がいる。その子供達は今何処にいるのだろう。ときどき彼女は低く長い唸り声を上げた。それはなんだか哀しげな声に聞こえた。
まさか怒り狂ったバッファロー達に子供達は踏み殺されてはいないだろうか。心配だ。

[ボーダー、8:38]
国境付近の草原は短く枯れてしまっているが、シマウマやガゼルの仲間は相変わらず一杯いる。今日も暑いので、バラニテスの木陰の一つ一つに草食獣が集まり休息している。
チーターを発見した。そこは限りなく国境沿い、いや、もしかしたらタンザニア領土かも知れない。それでも他のマサイマラのサファリカーもいることだし、ちょっとだけでも観ていこうということになった。
そのチーターたちは、この数ヶ月間姿を見せなくなっていた、3頭の子供を連れた親子だった。きっと今までタンザニアに住んでいたのだろう。そういえば、もともとこのチーターはタンザニアで生まれた子供達なのだ。
子供達は僕らのサファリカーを憶えていてくれたようだ。車に近寄ってきて以前と同じようにタイヤに齧り付いたり、車の下に潜って鬼ごっこを始めた。
ボクは助手席に座っていて、運転席側にいる子供の写真を撮ろうと助手席のドアに腰掛け(本当はしちゃいけないけど)上半身を乗りだしていた。すると反対側から勢い良く1頭の子供がボンネットに飛び乗った。子供はボクが側に座っていたのを知らなかった様子で、お互い剥き出しの顔で向き合ってしまった。一瞬身を固くしたが、ボクは目を離さずにゆっくりと助手席に戻ったので子供はそのままボンネットで遊び続けた。

フロントガラス越しに撮ったチーターの子供。一回り大きくなった気がする。


およそ2ヶ月足らずで、一回り子供達は大きくなっていた。ママのハンティングの腕が良いのだろう。成長期らしく長い四肢を持て余している気がした。
最近、僕らは国境付近へ頻繁に訪れるようになったおかげか、このエリアがそんなに遠く感じなくなってきた。それでもまたこのチーター親子がマサイマラ中心部に戻って来てくれないか、ボクは心待ちにしている。でもこればっかりは、都合通りにはいかない。
なによりも国境などという人間が勝手に作りだした境界線など関係なく、自由に何処でもいける動物達が、羨ましい。

[ミリマタトゥ、9:40]
いつものイチジクの樹の下で朝食をとろうとしたら、木の全体をクモの巣が覆っていた。
よく見ると、それはクモの巣ではなくシルクの糸を出す蛾の幼虫だった。無数のイモムシがシルクで作った通路のような巣の中を、つるつるとかなりのスピードで移動していた。このイモムシは、集団で一つの木全体を巣にしてしまい、シルクで包み込むことによって外敵から身を守っているようだ。

マサイ族のドライバーであるパトリックおじさんがいうには、数週間もしないうちにイモムシは蛾に変わり、この木を包み込むシルクも消えてしまうそうだ。
図鑑を見て調べてみたが、名前が分からなかった。ケニアにはまだまだ一般的な昆虫の本が少なくて困る。

3日、
マサイの村へお土産を届けに

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