3月中旬のサファリダイヤリー、その3
19日、
[ゲート、6:40]
おなじみの「木登りメスライオン」が道路を歩いている。何故か2頭いる子どものうちの1頭がいなかった。どうしたのだろう。
歩きながらメスライオンは時々振り返って、辺りの様子を窺っているように見えた。いなくなってしまった子どもを探しているのか。
朝日の中、道路を振り返りながら進む親子
メスライオンと一緒に歩いていた子どもが、ウギャアウギャアと、突然鳴きだした。ボクには兄弟を探して心配して呼んでいる声に聞こえた。メスライオンも鳴きだす。長くて高い遠吠え、これは明らかに子どもを呼んでいる声だ。
するとボクの耳に、何処か遠くでライオンの子どもの声が聞こえた。
そして2頭は歩いてきていた道路を引き換えし始めた。
僕らのサファリカーは先回りして子どもの声が聞こえる辺りを探したが、何処にも見付からない。そしてマサイドライバーのパトリックさんが気付いた。
「ああ、木の上にいるよ」
そう言われて1本のバラニテスの木の上を双眼鏡で探すと、股になった木の幹の間に身を丸くした子ライオンの姿を見つけた。
どうやら降りられなくなってしまったらしい。そんなことをお構いなしにメスライオンは何処かへ行ってしまおうとしたが、やはり心配で引き返してきた。そんな状況だろうか。
メスライオンともう1頭の子どもは引き返してきたが、木の下には行かず、50mほど離れたところで休み始めた。あくまでも自分自身の力で子どもが木から降りるよう教育しているようだ。
さすが木登りが得意がなメスライオンだけに、「木登り教育」には厳しい。
追伸:気温がまだ上がり続ける11:00。僕らはサファリの帰り際に今朝、子どもが登っていた木のそばを通り過ぎた。
まさかもういないだろうと思って何の気なしにチェックしてみると、同じ木のちがう枝にまだ子どもが乗っていてびっくりした。
かれこれ僕らが見つけてから4時間が経っている。この子どもにとってこれはかなりの試練ではないだろうか。それとも案外、木の上の快適さを知ってしまったのか。[ミリマンビリ、7:30]
知り合いの別のロッジのドライバーから無線で情報が流れてきたとき、ボクとパトリックさんは顔を見合わせて驚いた。
無線では確かにドライバー専門動物用語で「サイ」を示す言葉が流れている。パトリックさんが無線でもう一度確認する。
「再確認するぞ、ミリマンビリにサイがいるのか?」
「ああ、でかいのが2頭もいるよ」
迷わずボクは思った。きっとクロサイのハナ子が彼氏を連れて戻ってきたに違いない。
さっそく駆けつけてみる。草原に2頭仲良く並んで歩く巨体はすぐに見付かった。
右で先を行くのがハナ子
双眼鏡で確認すると、確かにメスはハナ子だった。彼氏を連れて「里帰り」と言ったところか。パトリックさんは、
「メスがオスに土地を教えているんだ」
と言った。見ていると確かにハナ子が彼氏を誘導しているようだ。オスは常に辺りを警戒して落ち着かないようだった。彼氏の方はこの土地に来るのは初めてだ、とパトリックさんが言っていた。
「これから2頭はこちら側に住み着くだろう。お客さんが喜ぶな」
パトリックさんが嬉しそうに言った。本当にそうだ。毎回ゲストに「マサイマラにはサイがいないのですか?」と尋ねられるたびに長い説明をするのは正直大変だったのだ。
でもボクが何よりも嬉しいことは、ハナ子が決して馴染育った土地を忘れていなかったことだった。ハナ子がこの土地の素晴らしさを紹介して、彼氏に気に入ってもらえたらいいな。[ミリマンビリ、8:30]
先日、ライオンに遭遇して逃げ出したチーター親子が今日も獲物を求めて移動を繰り返していた。
母親が歩き始めるたびに2頭の子ども達は戯れあい、追いかけっこをした。そんな姿に目を奪われていると、いつの間にか母親チーターがいない。
子ども達の後について追いかけていくと、そこにはトムソンガゼルを捕まえた母親がいた。
ボクはハンティングをしている場面を見れなかった悔しさよりも、その母親の手早さと優秀さに感動してしまった。[ギラレ、10:13]
マサイ族が放ったのであろう野火が、オロオロロの丘の上から下の保護区に入り込もうとしていた。かろうじて野火は草の生えていない道路でストップしている。
無数のコウノトリが煙をもろともせず舞い降りては、逃げ惑うバッタなどの昆虫を食べている。
焼けた草原を跳ぶコウノトリ
先週中に焼き尽くされてしまった草原には新しい新芽がすでに出てきている。そしてどうしてわかるのだろうか、さっそくその草を求めシマウマの群れが集まって来ていた。一面を眺めただけで300頭はくだらない。これからもぞくぞくと集まってくる模様だ。