ボルネオ紀行

連絡:今回はズームなしのコンパクトカメラしか所持しておらず、望遠で撮った奇麗な写真は友人から提供してもらったものです。

日本へ一時帰国した帰り、マレーシア領のボルネオ島へ寄り道をしてきた。
6月にウガンダへマウンテンゴリラを見に行って以来、ボクの興味は熱帯雨林に広がっていった。そして原生の森に特有の植物が凝縮したような濃厚な空気に思い焦がれるようになっていた。これはボクが普段乾燥したサバンナに長く住みついてしまったせいだろうか。
とにかくボクは気心の知れた自然好きの仲間達とSARSの話題で盛り上がっている日本を抜け出した。案の定(?)観光客のめっきり減った東南アジアはノンビリしていた。マレーシアの国内線の予約は前日に行えば間に合うという僕ら「行き当たりばったり」的な旅行者には快適な旅になった。

コタキナバルの奇麗な夕日
(飛んでいるカジキはモニュメントです)


サンダカンの魚市場2階のローカルご飯屋さん
女の子達が大量のオイスターソースたっぷりのビーフンと、甘いバナナの揚物を売ってる。
けっこう美味しい。


ボルネオ島の北部サバ州のコタキナバルは玄関都市だ。そこから僕らが向かったのは飛行機で50分東へ飛んだサンダカンで、今回の短い旅行の中心地となる。

セピロク・オラウータン・リハビリテーション

まず僕らはオラウータンの孤児院がある「セピロク・オラウータン・サンクチュアリ」へでかける。ここでは獣医師であり青年海外協力隊員として働いている山本純栄(やまもとすみえ)さんにお会いした。

サンクチェアリの中にはオラウータンに「おやつ」を与える時間が1日に2度ある。そこへ山本さんに同行してもらった。ここでは孤児院から野生へ戻される途中のオラウータンたちが栄養を補うため「おやつ」のバナナやサトウキビを食べにステージへ姿を見せてくれるのだ。
そのステージまで良く整備されたボードウォークの道を僕らは歩く。辺りを見上げると、背中が反り返るほどの原生の高木が栗林していて圧倒される。本当のジャングルに飲み込まれ、ボクはひどくちっぽけな存在に感じた。上手く言えないけど、ボクの吸いたかった密度の濃い空気に溢れている。
冷静になってみると、植物相はアフリカ熱帯林と同じようにシダやショウガの仲間、それに実のなるイチジクの樹が多かった。

見物客にパフォーマンスするサービス精神満点の野生に戻されたオラウータン

この日のおやつの時間にやって来てくれたのは6歳くらいのまだ若いオラウータンの子ども1頭だった。森の高木に張り巡らせたワイヤーを伝いオラウータンは独りでブラブラとぶら下がって遊んでいる。まるで僕らにパフォーマンスを見せてくれるかのように振る舞ってくれた。案外、本当に見学者の目線を意識しているのかもしれない。こうやって、野生では滅多に見ることのできないオラウータンを、見学者の僕らはこのときだけ手軽に見ることが出きるのだ。
一時軽いにわか雨が降ったときオラウータンは、なんと大きなショウガの葉っぱを集め雨傘の代わりに頭に乗せた。母親と別れ孤児院で暮らしていたオラウータンのはずなのに、こんな知識をどうやって身に付けたのだろう。本当に賢い生き物なのだ。

雨が降ったので、葉っぱを傘の変わりに頭に乗せた

レンジャーがバナナとミルクを持って来てくれた。オラウータンがゆっくりそれを食べていると、いつの間にかブタオザル達が集まってきていた。個体数の多いブタオザル達に餌付けをしたつもりはないようだが、すっかり順応してしまった彼らは見学者達の目も気にせずかなり近いところまでやって来ている。
植物食だと聞いているオラウータンだが何故かミルクが大好きらしい。それを飲み干すとオラウータンはすでにお腹一杯になってしまったらしい。そしてあまり物欲がないのだろうか、まだ沢山残っているバナナを置いてまたワイヤーを伝い、やがてやって来たときと同じようにブラブラとワイヤーにぶら下がり、森の中へ消えていった。すかさず余ったバナナをブタオザルたちが奪い合いをする。ブタオザルの行動はニホンザルに良く似ていると思った。それにくらべオラウータンの飄々とした、どこか卓越してしまったような態度に気に入ってしまった。なんとも興味深い。

山本さんのお話では、サンクチェアリに設けられた孤児院には現在60頭近くの孤児オラウータンが収容されているという。その数の多さにびっくりした。連れて来られる孤児の多くは傷ついたり、親や生息地を失ってしまったオラウータンらしい。
通常の野生環境でオラウータンは単独生活し、集団による社会生活を必要としない。しかしここでは母親のいない彼らは孤児同士、お互いを見て学び合うという。なるほど、それは一つの方法だと感心。

バナナを食べるオラウータンを、横からブタオザルが見つめてる

問題もあるという。例えばこのサンクチェアリの敷地面積は40平方kmで、今現在200頭近くのオラウータンが生息する。専門家によると、野生のオラウータンにとって必要な生活環境を考えると、ここで生存できるのは80頭が限界らしい。明らかに生活密度がオーバーしてしまっている。だから完全に独立してしまったオスなどは、近隣の畑などを荒らす被害を及ぼす前に別の保護区へトランスロケーションをしているのだという。

貴重なお話や見学をさせていただき、山本さんにとても感謝している。

その後、僕らはインフォメーションセンターに設けられたビデオ上映を観たり、資料館(博物館?)を見学させてもらった。
資料館にはたくさんのオラウータンの写真があった。彼らの表情を見つめ思ったことは、今まで色々な類人猿を見てきたけど、彼らほど人間に眼差が似ている生き物はいないだろう、ということ。「オラン・ウータン」という言葉が現地の言葉で「森の人」と呼ばれるのもうなずけた。

ガイドブックの写真より、
オラウータンの子供たちの眼差



・その2、スカウ・ボートクルーズ

・その3、セリンガン・タートル・アイランド