その3,セリンガン・タートル・アイランド

海洋から見たセリンガン島
(ガイドブックより)



僕らは一度サンダカンの街に戻り、次は海洋へとジェットボートを走らせた。
向かう場所は、セリンガン島というウミガメの産卵場所として有名なところだ。
一時間かけて島に着くと、さっそく受付で細かいブリーフィングを受ける。ウミガメ保護のための海洋公園であるから規制が厳しいのだ。例えば夕方6時以降ビーチへの外出が禁止だったり、夜間のカメラ撮影は別料金を払うシステムになっていた。厳しい規制の理由は、この8エーカーという小さな島にやってくるウミガメの個体数の多さにある。ちなみに前日の記録はこうだ。
4月21日、
上陸したウミガメの総個体数、 15匹
産卵したウミガメの数、    10匹
産卵された卵の総数、    914個
孵化して放流された個体数、 107匹

上記のように一晩に10匹以上ものウミガメが産卵にやって来る島だから、規制も厳しく、保護の面からも世界的に有名な場所なのだ。
僕らはここでウミガメ観察のための申請書を提出し、今日一番最初に着いたウミガメの産卵のみを観察する許可が下りる。一番最初にやってくるウミガメが何時になるのか、もちろんわからない。日が暮れてすぐかもしれないし、早朝かもしれない。とにかくそれまで僕らはこの島でくつろぐことになる。日がな日中は、奇麗で生暖かい海のなかを漂って遊んだ。サンゴ礁には小型の熱帯魚が群れている。すぐそこにフィリピンのセブ島が見えた。

まこと美しいセリンガン島のビーチ

砂浜は至る所、ウミガメの足跡で一杯だ



辺りが暗くなってから施設のレストランでマレーシア料理に舌鼓を打っているときだった。ごはんのお替わりをお願いしていると、外からスタッフの声が聞こえた。
「ウミガメが来たぞお〜!」
レストランに集まったいた30人くらいの見学者(大半はすでに食事を終えていた)は速やかにヘッドライトを持って飛びだしていった。僕らも残された料理に未練を残しつつ後を追う。時間は7:45だった。ウミガメの産卵時間としては早いほうではないだろうか。
僕らが日中泳いでいたビーチに体長151cm、体重100kg(ガイド談)もの大きなアオウミガメが横たわっていた。僕らは代り番こ、レンジャーがウミガメのお尻を照らしたトーチの中で産み落とされるピンポン玉のような卵を確認した。
ウミガメが卵を産み落とすそばから、レンジャーは手を伸ばしてその卵をヒョイヒョイと拾ってバケツの中にしまい込んだ。
「卵を取られて母ウミガメは嫌がらないのか?」
と、見学者の1人が質問すると、
「生み始めたら母ウミガメは止まらないんだ。それに後ろを振り向けないのでレンジャーが何をしているか気付かないよ」
と、ガイドが説明してくれた。
合計84個の卵を産み落とし、母ウミガメは卵の入っていない穴に後ろ足で砂をかけ戻した。海へ帰る邪魔をしてはいけないと、僕らはその場を後にした。
そして孵化場へ向かう。柵で覆われて外敵のいないここに穴を開けて、今しがた回収した卵を埋めるのだ。卵を触らしてもらった。もっとフニャフニャと柔らかいものだと思ったけど、固くて張りがあり、本当にピンポン玉だった。

卵を埋めた場所がずらりと並んだ、日中の孵化場
(ガイドブックより)


次に僕らは、3日前に孵化場で生まれたウミガメの赤ちゃんを海へ放しにいった。ライトの明かりを全て消し、砂浜に100匹ほどの子どもを置いた。ウミガメの子どもは習性でほんのりと明るい海洋へ向かって歩きだすのだが、ここではガイド1人だけが海に入って、そこからライトの明かりを灯す。すると一斉に子ども達はライトの当たる海洋へバタバタと走り出していった。海に浸かった子ども達はそのまま海洋へ散っていった。
セリンガン島は観光客のために優秀なガイド、スタッフ、レンジャーによって、良く配慮された施設だった。ここまで徹底すれば保護と観光は両立できる、という見本ではないか。

このようにして、ボクの始めてのボルネオ旅行が終わった。
振り返れば、ボクらしくない慌ただしい旅程だったけど、それに伴う感動や経験も大きかった。
マレーシアは人々も穏やかで、食べ物も美味しいし、観光もしやすい。これに比べると、アフリカを個人的に旅行するということはいかに大変だということがしみじみわかってしまった。まあ、それはそれでいいのだけど。
ボルネオにはまだまだ行きたいところがある。今回は時間の都合で足を運ぶことはできなかったけど深いジャングルの上にかかるつり橋を歩いたり、無数のコウモリがいる洞窟なんかもある。今回の旅はかるいイントロダクションということで、また行く予定を立てている。
こうやって好きな場所がまた世界に一つ増えたわけだ。ボクは死ぬまでに一体いくつも好きな場所が出きるのだろう。

おしまい

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