5月上旬のサファリダイヤリー、その1

1日、
40日ぶりにマサイマラへ戻ってきた。
ナイロビもよく雨が降っていたが、マサイマラはさらに降水量が多いようだ。飛行機の上から見ると草原を溢れかえす水が太陽で反射してキラキラ光っていた。
キチュワテンボの滑走路は足の踏み場がないほどの泥濘だ。でも日本から帰ってきたボクにはこの泥の感触さえ嬉しいものだった。
今朝の雨はそうとう激しかったらしく、早朝のバルーンサファリは中止されたそうだ。そんなことは滅多にない。
草原は一面新しい緑だ。3月にここを離れるときはどうしようもなく乾燥していて呼吸する息さえも熱かったけど、今の空気は水分をいっぱい含んで柔らかい。
この付近にいくつかあるロッジのスタッフ達が、妙に道端をウロウロしている。どうしたのかドライバーに聞いてみると、あまりにお客さんが少ないので暇を持て余しているらしい。2つのロッジは一時的に運営をストップしてリノベーションをしているという。仕事のないスタッフはロッジからロッジへ行ったり来たりして「仕事ないねぇ」なんて言いながら雑談を交わしているのだろう。
そんなスタッフのほとんどがボクと顔見知りなので、道端ですれ違っては笑顔で手を振ってくれる。

2日、
[6:30、コムチェゾ]
「この辺りにはメスライオン3頭と、1頭の子供がいたよね」
と、ボクが言うとドライバーは、
「う〜ん、最近は見かけないね…」
と答える目先、3頭のメスライオンと1頭の子供が寝そべっていた。
ボクはちょっと自慢気になった、
「ボクの言っていたのは、このライオンたちだよ!」


いつも仲良しのメス3頭、


シャイな1頭だけの子供、



[6:45、コムチェゾ]
道路は泥濘が激しく、僕らのサファリカーは草の上のオフロードを進んだ。一度車が激しく揺れたと思うと、進まなくなってしまった。降りて見ると、片側のタイヤがイボイノシシの掘った穴に落ち込んでいた。付近を走る別のサファリカーに助けを求め、ワイヤーで牽引して穴から出してもらった。
すぐ近くにも別の穴があり、そこから親子のイボイノシシが飛びだした。雨季で泥濘んだ土は掘りやすいのだろうか、いつもより沢山の穴が地面に空いている気がした。

[8:05、マジヤンデゲ]
湿原には渡りで飛来してきているスキバシコウがアオサギと一緒にカエル探しをしていた。マサイマラの草原のカエルは日本のカジカガエルのように奇麗な声でコロコロと鳴く。一度、声のする場所を探し回ったことがあるけど、一向に見付からなかった。きっとかなり小さいカエルなのだろう。

[10:00、エジプシャングース]
死んだバッファローの肉の塊の側に、オスライオン2頭とメスライオンが満足げに横たわっていた。このバッファローは、一昨日ハンティングしたと言う。さすがにこんなに大きな獲物なら、1週間くらいかけて食べれそうだ。付近にはジャッカルやハゲワシがそわそわとおこぼれの順番待ちをしていた。

満腹状態のオスライオン



[10:17、セレナ]
マラ川は水嵩を増し濁流に変わっていた。
こんなに激しい流れの中ではカバもワニも隠れて見られないだろうと思っていると、水際に倒木が浸かっており、そこのちょっとした澱みの中に大型のワニが横たわっていた。脇腹がはち切れそうに伸びている。ドライバーは何か獲物を食べたのではないか、と言っている。
僕らが近づくと面倒くさそうに身体を横に背けたが、流れの中に身を隠すつもりはないようだ。

マラ川の流れの緩いところで休息していたナイルクロコダイル


3日、
[17:00、セレナスワンプ]
一瞬、強い日差しが入ったと思うと、冷たい風が通り抜け大粒の滴がフロントガラスに音とたててぶつかる。そして雨のサファリになった。
クロサイ情報が入ったのけど霧が出てしまい見付からない。ようやく別の車のシルエットを探しだしてクロサイを見つけることが出来た。
変わらずクロサイのハナ子は彼氏と一緒にいてくれた。2頭は雨も気にせずあてもなく歩いているようだった。

ボーイフレンドを誘導するハナ子




決まって移動を誘導するのはメスのハナ子だ。そもそもこの場所もハナ子のテリトリーだったので、まるで彼氏はハナ子の尻に引かれる「婿養子」のように思えてきた。

[18:00、ゲート]
帰りぎわ、3頭のメスライオンを見かけた。シエニのプライドだろう。1頭の子供がいるはずだが見当たらない、どこかの茂みに隠れているのだろうか。3頭のメスは雨の中、代り番こに身体を擦りつけあいスキンシップをしていた。
すぐそこにオスがいるというので向かうと2頭のオトナ兄弟がいて、ボクは不審に思った。この兄弟たちはギラレというもう少し先にナワバリを持つオスだったはず。そしてシエニのプライドのボスはタテガミの黒い立派なオスだったはずだ。
あのタテガミの黒いオスとこの兄弟は血縁関係だったのだろうか?それともタテガミの黒いオスは自分のプライドを乗っ取られてしまったのか?
ボクのいない間にナワバリ変更があったのかも知れない。

5日、
久しぶりで、熱気球に乗り込んだ。

[9:55、セレナ]
3頭のハイエナのうち1頭はイボイノシシの肉片をくわえていた。自分でハンティングしたのだろうか。肉をくわえて自慢げなハイエナは後ろから付いてくる2頭が気に障るのか、時々振り返っては鳴き声をあげて追い払っていた。

[11:04、モゴロ]
セレナ方面にモゴロと呼ばれる側溝がある。いつもは乾いているが、雨が降ると一時的に小川に変わるところだ。
モゴロは連日の雨でかなり水嵩を増していた。そして驚いたことに、3匹もの大型のワニが泳いでいる。きっとマラ川が増水して流れが強くなりすぎてしまったので、ワニ達もここまで避難してきたのだろう。

水嵩の上がった側溝でゆうゆうと日光浴をするクロコダイル


6日、
[17:00、セレナ]
セレナの草原は水はけが良くいつも車で走りやすいうえに、短い草が生える。ここにくればガゼルやトピの群れに容易に会うことができる。その中にヌーが一頭だけ佇んでいた。
この時期、マラ・トライアングル内のヌー達はほとんどタンザニア方面に移動してしまっているので、滅多に見られない貴重な存在となる。
近づこうとすると気配を察してか、50mも接近しないうちに逃げられてしまった。

ぽつりと佇む1頭のヌー




こんな風に、群れから離れて孤立して生きるヌーには人(獣)一倍の警戒心がなければ生きていけないのかも知れない。
マサイマラ国立保護区は「ヌーの大移動」で有名な場所だ。だけど、ヌーにはヌーなりの考えがあって、この個体のように移動しない権利があってもいい。彼はその権利で自由を得ることが出来たのか。それとも単に仲間を見失って単独になってしまったのか。

[17:05]
ここでは一頭のハイエナが寝そべっている。近づいて分かったけど、このハイエナはタイヤの跡が作った溝に下半身を浸けて、いかにも気持ち良さそうに水浴していた。
今日は曇っていて別段暑い日には思えない。ハイエナは案外奇麗好きなんだろうか。

水溜まり浸かり、気持ち良さそうな顔をするハイエナ



[17:40]
道路を走っていると4組ものセグロジャッカルのペアにあった。
彼らは道路の上に跳んでくるカエルやバッタを捕まえているようだ。確かに深い草原の中を探し回るより効率的だろう。

イネについているバッタを捕まえて食べるセグロジャッカル


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