6月のサファリダイヤリー、その2
22日、
すっかり減ってしまっていた観光客数が少しずつ戻り始めたようだ。マサイマラで見かけるサファリカーの台数が増え始めた。あんまり車が多すぎても動物にストレスを与えて困るけど、あるていど動物を探す車があるほうが珍しい動物を見付ける可能性も高くなる。微妙なところだ。[8:48、ムワリム]
僕らはチーター探しのために半日サファリへ行き、運良く国境付近で1頭に出会えた。
この1頭は小柄だったのでメスかと思ったが、股を見るとオスだった。毛の色からするとまだ若そうだ。最近、このタンザニア国境付近ではライオンにしてみても見たことのない個体をよく見かける。マサイマラに住むネコ科のナワバリは流動的なのだろうか。
若チーターはゆっくりと歩きながら、草食獣の群れへ向かって歩いているように見えた。
僕らはその場所からそんなに離れていない処へ行き朝食を済ませ、草食獣の群れの方へ近づき観察をした。僕らと同じように数台のサファリカーがチーターのハンティングを見ようと待機している。
400m程先でしばらくお座りをしてじっと草食獣の群れを見つめていた若チーターだったが、何を思いついたのか別の方向へテクテクと歩き始めてしまった。
ハンティングを諦めた理由はたぶん、獲物となるトムソンガゼルのほかに大型草食のシマウマやトピが一緒に群れていたからだろう。
シマウマやトピは背が高いので外敵を見つけやすい。警戒してしまうとトムソンガゼルも一緒に逃げてしまう。それに体重の軽いチーターは、力もあって体重も重い草食獣に反撃され逆にやられてしまうこともあるのだ。
僕らは観察を諦めた。その後若チーターが獲物を仕留めたという情報は入らなかった。[11:53、ミリマンビリ]
僕らはライオン情報を聞き出してその場所へ向かう。
この一帯はよりいっそう草丈が高く乾燥した場所だった。乾燥した草とライオンの身体の色は似ているので、ライオンが寝てしまったら見つけるのが困難だ。
ほとんど諦めかけたころ、ドライバーが畏敬すべし眼力で草の中からわずかにとび出たライオンの頭を見つけた。
近づいていくと、情報通りライオンがバッファローを食べた後だった。
ライオンは2頭の若オスだった。この若オスたちが自分たちで仕留めたのだろうか?
死体の傍らにいた若オスが、獲物は横取りさせないとでも言わんばかりにこちらを睨み付けていた。
こんな大きな獲物を仕留めるのは並大抵のことではあるまい。きっと長時間にわたる壮絶な死闘だったと想像する。見てみたかった。
しばらく見ていると、1頭のオスライオンは柔らかそうな草を千切って少しだけ食べた。飼い猫や犬が同じことをするように、ライオンも胸焼けがしたり胃の消化を促進させるために青草を食べることを知った。
殺されたバッファローはまだ内蔵付近が食べられていただけで放置されていた。この肉のお陰でしばらく餓えに悩むことはないだろう。
上空にはハゲワシが集まり始めていた。24日、
[7:00、キチュワ]
昨日の情報で、僕らの利用する滑走路付近でライオンがバッファローを仕留めたという話を聞いた。獲物を得たらしばらくその場に留まっていると思うので今朝も同じ場所へ向かってみる。
昨日はメスライオンしかいなかったそうだが、今朝はオスライオン1頭も2頭のメスとともにいた。その回りには11頭ものハイエナと数匹のジャッカル、それに木の上では無数ハゲワシたちがおこぼれに預かろうとじっと待機していた。
ボクは以前、乾季に入るとライオンが捕食しやすいシマウマやヌーが移動してしまい、今度は定住しているイボイノシシを狙う、と書いたことがある。
しかしここまで草原の草が高くなってしまうと、小さなイボイノシシは姿が見えにくくなりハンティングがより難しくなるのではないだろうか。
そうなると、次はバッファローを狙うのでは?
でもバッファローは体が大きく力もある。襲いかかる肉食獣を逆に殺してしまうと言われる気の荒いバッファローをハンティングするのは、ライオンにとってかなり危険の高いかけとなるだろう。
どんなに危険でも、ライオンは生きるために獲物を捕らえ肉を喰らわなければいけない。肉が手に入らないからと言って草を食べて生きていけるような体質ではないのだ。
乾季は餓えで悩まされ、オスはナワバリ争いの死闘をする。メスは育てた子供を新しい群れのオスに殺されてしまったりする。そんな出来事を知ってしまうといくら「百獣の王」の異名を得ようとボクにはライオンの人生(?)がちっとも羨ましいと思えない。苦労の多い彼らの生活に同情することはあっても。
ところでこのオスライオンは何処から来たのだろう。この辺りをナワバリとするシエニのプライドの兄弟オスライオンではない。タテガミの生え具合を見るとまだそれほど歳をとっていない若オスのようだ。
すぐ側にはマラ川が流れているので、対岸のマラリアンダ方面からやってきたオスだろうか?25日、
[マジヤンデゲ、18:00]
この付近にこっそり生きているように思われる若オスライオンが姿を現した。
この若オスを見るのは3ヶ月ぶりくらいだろうか、以前よりもタテガミが生揃ってきていた。
この若オスが「隠れキャラ」のように時々しか僕らの前に姿を現さないのはいくつかの理由があるようだ。
まずこのエリアは湿原で年間を通して草丈が高く車が入っていきにくく、ライオンを探しにくい。それで遭遇率は低くなる。
さらに湿原の隣のマラ川沿いは常緑の森に覆われており、もしこのライオンが森に住む習性をもつのなら、やはり車が入っていけないので生活誌がわからないだろう。
それにボクは保護区の境目のように、ナワバリの境目にも川が使われていると勝手に思い込んでいたが、ライオンだって泳げるので川の向こうまで彼のナワバリが続いている可能性はあるのだ。27日、
昨夜、久しぶりに雨が降った。[セレナ、7:57]
ライオンのオトナメス3頭が寝そべっている。ほんのすぐ側でハイエナが3頭同じように寝そべっていたので、てっきりライオンが6頭いるのかと思うほどだった。
メスライオンの顔にわずかな血の跡が付いている。どうやら昨夜から日の出にかけて何か食べたようだ。腹を満たし気分が良いのだろう。だから今のところ嫌いなハイエナを追い立てる気がないらしい。
もうすっかり獲物を食べ尽くしてしまったところからすると、イボイノシシかガゼルの子供のような小さい草食獣を仕留めたのかも知れない。
メスライオンたちは朝日を浴びながら、お互いの顔を舐め合い毛繕いを始めた。
[ミリマンビリ前、8:23]
草原を歩くクロサイのハナ子を見かけた。
話には聞いていたけど、本当に1頭になっていた。オスのタロウ君と離れてしまったのだ。3ヶ月ほど一緒にいた繁殖期間が終わったということだろうか。それとも彼氏に逃げられてしまったのか。とにかくタロウは川を越えて元自分がいた場所に戻ってしまった可能性がある。
以前のようにまた独りになってしまったハナ子。でも、今のボクにはそう悲観的には見えない。もしかしたらハナ子のお腹には新しい命が宿されているかも知れないから。[ミリマンビリ前、]
ゾウの群れの中に1頭のオトナメスがいて、左肩の付け根に30cmほどのまだ新しい擦り傷があった。
木で引っ掻いたのだろうか、傷の場所からするとそれよりも仲間同士の喧嘩により牙で傷つけられたみたいだ。見た目にもちょっと痛々しい。実際オトナメスも気になるようで、草を食べながらも時々鼻で傷を触ろうとするそぶりを見せる。しかし傷口には触れたくないようで、そのまわりを撫でる。
目で確認できない場所なので、匂いを嗅いで傷口の様子をみているのかも知れない。