カカメガの森紀行

鬱蒼と茂る森に包まれた、真っすぐ伸びる主要道


今年に入ってからウガンダのゴリラの森、マレーシアのオラウータンの森と、ジャングルばかりへ身体が向かってしまう。
理由はよくわからないけど、森の中に入ると気持ちが良いのだ。こういうのは「熱帯雨林依存症」というのだろうか?、まさか。
休暇をもらったのでケニア国内のショートトリップへ出かけることにする。場所はカカメガ国立保護区に決めていた。そこにはケニアで唯一残された原生林があるという。そしてケニアではこの森にしか生息していない「グレートブルー・トゥラコ」という奇麗な鳥がいる。それ以外の情報はあまりないけど、とにかく以前から興味があったので行ってみようと考えた。
ナイロビより北西へ9時間(ウガンダ・ビクトリア湖方面)、500kmの道のりを定期運行バスは直走った。

まずはカカメガの町で1泊し、情報収集することにした。けれどホテルの人やタクシーの運ちゃんはその森について詳しくなかった。町に5件ほどある本屋でカカメガの森関係の本があるか尋ねたが、どこもNOだった。地元の人にとってその森への感心はあまり無いように思えてきた。とにかく保護区のゲートまでの行き方はわかった。あとは直接行ってみるのみだ。
町より乗り合いバスで20分走り、そこから自転車タクシー(ボダボダと呼ぶ)に乗って5分くらい砂利の坂道を下ると、そこにこじんまりとKWS(ケニア野生生物局)の入園ゲートがあった。

KWSのゲート
ここから国立保護区だが、地元住民も住んでいる




森への入園チケットを買った。森には危険な動物はいないので1人で歩いても良いという。また地元住民のガイドを雇うことも可能だった。
手続きを済ませ保護区のゲートをくぐり抜け、改めて辺りを見回すとボクは、なんとも言えない感覚を覚えた。
けっして狭くない道路(車が2台すれ違える程度)を、高木たちが覆い隠すように広がっていた。緑はとことん緑で、不思議な懐かしい匂いがした。そしてボクは何故だか感極まり、涙が出そうになってしまった。この思いを文章にするのはどうにも難しい。

地元のエディケーション・センターが主催するガイドを雇った。名前はヘンリーと言いこの仕事を始めて4年。カカメガ周辺に住むルイヤ族の1人だ。
彼には最初の2日間同行してもらい、小さな鳥を探したり、伝統薬として使われる樹木を教えてもらったりした。合計3日間、ボクはこの森に包まれた。

・1キャンプサイト

奇麗に整備されたキャンプサイト



ボクは公園管理局が運営する「バンダ」と呼ばれる小屋に泊まっていた。保護区の中にあるキャンプサイトだ。この時期、お客さんはボクしか居なくて、あとは奥の方にドイツから来た大学生達が調査のために長いことテントで連泊しているようだった。
バンダはとても清潔にしてあり静かで快適だ。電気はないけど灯油ランプが置いてある。水は桶に入っていて、日中なら野外で水浴が出きる。問題はベットに寝具がないことと、食事がとれる場所がないことだった。
歩いて40分かけて保護区の外の主要道まで出ると村の食堂もあるのだが、いちいち面倒くさいので、駄目元で公園管理局のスタッフが寝泊まりする詰め所にあったキオスクの女性に「食事作ってくれないか」お願いすると、わりとあっさりOKしてくれた。ついでのブランケットを借りたいと申し出ると、近所から借りてきてくれた。なんとかなるものだ。

昼間、屋根付きのベンチで寛いでいると、ブーンと言う音が上空で聞こえた。それがどんどん近づいてくるので何事かと見上げると、大きなハシダカサイチョウが頭上の木の実を食べに飛んできていた。さっきの音は、サイチョウの羽か大きなクチバシが風を切る音らしい。

頭上の木の上で大きなクチバシのサイチョウが顔を出して実を食べている


この周辺にはシロクロコロブスという美しいサルの群れがいる。時々長く間延びする鳴き声が森に木霊した。デジカメを持って公園ゲート周辺の群れに近づく。そこのコロブスはすぐに逃げださなかった。きっとこの場所は人が頻繁に行き来する場所なので、ここの人間が危害を加えないことを学習し、慣れたのだろう。マサイマラのゲート付近に生息する逃げないシマウマと同じ理由だ。おかげで満足な観察が出来た。でもコロブスと目が合うと、向こうはやはり警戒をするらしい。すっと場所を移動してボクの視界の届かない場所へ隠れてしまう。ゲートに駐在しているレンジャーたちと話をすると、レンジャーたちの緑のユニフォームを着ていればもっとコロブス近づけると言っていた。

午後3時頃になると決まって雷が鳴りだす。そして1時間後に雨が降り出す前にボクはキャンプサイトまで戻らなければいけない。バンダに戻って用意してあったレインコートを着て、黒い雲がゆっくり上空を覆い尽くし雨が降ってくるのを眺めた。
風とともにポツリポツリと雨粒が降りはじめ、やがて激しいスコールになった。
奇麗に刈り込まれた緑の芝生を見ると、白くて小さいものがピョンピョン跳ねていた。小さなバッタかカエルだろうか。手に取ってみるとそれは大粒の氷の塊で、ようやくボクは雹が降っていることに気付いて驚いた。
夕方に雨が降るので夜間は冷えた。キオスクで夕食を済ませ、ライトの明かりで帰路を歩くと、辺りでホタルが柔らかい光りを出しながら沢山飛んでいて奇麗だった。

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