7月のサファリダイアリー、その4

29日、

最近は至るところで「野焼き」を始めたため、上空低いところはうっすらとかすみがかかって青空が抜けない。
きっと焼けた草の灰が上空を舞っているのだろう。
夜も星がハッキリ観えない日が続く。

[17:35、クフコ]
ここに住むヒヒの群れは夕暮れになると毎日草原へ出て来るようだ。草丈の短い草原の新芽を啄ばんだり、バッタを捕らえて食べている。そして時として大きなご馳走を手に入れる場合がある。
雑食と言っても食肉性の強いサバンナヒヒにとってのご馳走とは、ガゼルの肉だ。今回もトムソンガゼルの子供を食べるオトナオスを見かけた。ボクがこのヒヒの群れの食肉シーンを観るのはこれで2回目だった。

トムソンガゼルを貴重そうに食べるボスヒヒ


ちょうどこの時期はトムソンガゼルの出産期のようだ。
生まれたての子供は母親と一緒にいるとよけい危険なので、草原でじっとする習性がある。母親ガゼルが時々やってきてミルクを与えるとき以外はじっと石のように固まっている子供ガゼル。その間の数週間は体臭が無臭で、捕食者に狙われにくいと言われる。しかし、鼻だけでなく目の良いヒヒには格好の獲物になってしまうのだろう。
一番力のあるらしいボスヒヒが肉を独占していると、1頭別のオスヒヒがやってきて食べたそうにじっと見ている。ボスヒヒはそれが嫌らしく、そいつがやってくると移動を始めた。その後をオスヒヒはしつこく付いていった。
しっかりガゼルの肉を握りしめて離さないボスヒヒだが、ついに苛立ちが限界に来たらしく、ガゼルの肉を口にくわえたまま後ろから付いてきたオスヒヒを追い払った。
興味深かったのは、そんなオスの肉争いに参加せずいつものように草を食べる大多数のメスヒヒの存在だ。彼女達はまったく関せず、いつもの行動に明け暮れている。
もしかしたら、オスはハンティングという行動と食肉という行動そのものに興奮し、奪い合っているのではないだろうか。「狩猟本能」とはサル社会ではオスだけのものなのか。そうだったら、人の行動にも似てるものがある気がする。

30日、
[7:25、バグダット]
焼け野原の向こうに獲物を探しているチーターの親子を見た。2頭の子連れだ。
ここには乾燥した草原より移動してきたトムソンガゼルが群れをなしているのでそれを狙いに来たのだろう。

[7:44、ミリマンビリ]
久しぶりにミリマタトゥのプライドに遭う。オトナメス5頭と子供4頭が寝そべる。どうやら夜中に何か食べたようで、満足げに日光浴している。

観光客に睡眠の邪魔されたライオン


観光客を乗せたサファリカーたちはずっとライオンを探していたようで、ようやく会えたライオンたちをぐるっと取り囲む。
最近、このプライドのオスが一緒にいる所を見ない。先日国境付近で1頭でいるのを見たが、発情しているメスでも探していたのか。もしくは所帯が大きいので食いぶちが少なくて出張に出ているのか。

[8:08、エジプシャングース]
3頭の子連れチーターがいた。
やはり獲物となるトムソンガゼルを求めてだろう。焼け野原を歩いている。チーター家族が同じ場所に集中しだした。しばらくチーターが見付かりやすくなるだろう。

獲物を探して野焼きされた平原を歩くチーター親子

31日、
[8:11、ミリマンビリ]

以前より貫録がついた気がするハナ子

クロサイのハナ子が乾燥した草原を歩いていた。時々立ち止まっては好物のナスの葉を食べている。
ハナ子がお尻を向けたとき、ふと思う。彼女の横腹が飛び出してきている気がする。もしかして、妊娠したのだろうか?
それともただの肥満だったりして。

[9:40、ソルトリック]
小川を越えようとすると、水中でウネウネ怪しく光るものがいる。パイソン(ニシキヘビの仲間)だ。
大きさは2mほど。パイソンにしては大きくない。しかし丸々太っていて錦模様が奇麗だった。


普通、車の振動がするとヘビはたいてい逃げてしまうのだが、このパイソンはなにかずいぶんと嬉しそうに水中を這い回っていて車がすぐそばまで近づいても逃げなかった。
「珍しいもの見れてラッキーだね」
とドライバーに言うと、彼は身を震わせて「アンラッキーだ…」と呟いた。