19日、
朝起きると、心配性の例の男子生徒がどんよりした顔で現われた。
今朝はどうしたのか尋ねると「寝袋に毛虫がいた」という(笑)
ボクは「アフリカだからねぇ…」と促し、毛が刺さって痛むなら石鹸で水洗いを勧めた。別に痛むわけではないようで、彼は「ぼくってツイてないんですよねえ…」と言いながら棒の先に付く毛虫を焚き火で焼き、女生徒達の反感を買っていた。
彼はただ誰かの気を引きたいだけかもしれないと思った。今朝はオロオロロの丘より自分の足で歩いて丘を下り、マラ川まで歩くネイチャーウォークをした。
崖を慎重に下り、みんなの息が切れるとリッピアという野生ミントを嗅がせてリフレッシュさせた。
帰りの車で移動してる途中、ライオンのペアに会った。
1頭は最近この付近を行ったり来たりしている若いオスライオンで、メスは「木登り好きメスライオン」だった。彼女は少し前までシエニのプライドの兄弟オスライオンと共に行動していたのにいつのまにか新しいオトコに乗り換えていたようだ。それとも色々なオスの間を行ったり来たりしているのだろうか。やはりこのメスライオンは変わり者のような気がする。
交尾をしそうだったが、オスライオンの方は車に取り囲まれてナーバスになっている様子が見てとれたので僕らの車はその場を離れる。
車の数が少なくなってから交尾が始まったそうだが、ボクは観光(車)が野生動物にストレスを与えている事実を説明した。お昼の後はキャンプサイトで「マサイのビーズブレスレット作り」をした。近所のマサイママ5人に来てもらった。ボクはこういう細かい作業が好きでないので参加せず、遠巻きに見ていた。
細い針金にビーズ玉を一つずつ通していくわけだが、どういうわけか男子の方が器用で色使いのセンスも良かった。近頃の男子と女子は性格が逆転したのだろうか?
ある男子が作ったビーズのブレスレットを見て、マサイママが買ってもいいと言った。それがそうとう嬉しかったようで、彼はみんなに自慢しながら自分のプレスレットをうっとりと眺めていた。夕食は「自炊アフリカンクッキング」だ。
3人のケニア人シェフに来てもらい、それぞれスクマ、ウガリ、チャパティを作る手伝いをしてもらった。
器用さや刃物を用いるスクマ、チャパティは女子にまかせ、まず男子にはロッジの畑へ行って野菜を収穫してもらう。
ホウレンソウやナスビのほか、ちょうど手ごろなバナナが幹の上で実っていたので体重の軽い中学生を力のある高校生が肩車して共同でもぎとってもらった。
そして男子にはケニアの代表的な主食となる「ウガリ」を作らせる。
沸騰した鍋にトウモロコシの粉を入れ、ひたすら力一杯こねさせた。焚き火で行うので熱い。鍋を押さえる者、こねる者と二人一組になってくたくたになるまで作業させた結果、想像以上に舌触りの良い美味しいウガリが出来た。
料理はすべてケニアの習慣通り右手で摘んで食べてもらう。自分たちで苦労して作った料理だけにみんな楽しげに食事を堪能したようだ。
左上:スクマ(ケール)の葉を刻んで炒める
右上:チャパティを焼き上げる
左下:焚き火でウガリをこねる
夜空がよく晴れたので、星空観察会をすることになった。
みんなに寒くなくて汚れても良い格好をしてもらい、ロッジのサッカーグラウンドまで歩く。
サッカーグラウンドの芝生にねっ転がって見た夜空は、言葉に出来ないほど凄かった。天の川が白くくっきりと浮かんでいて、みんなは雲とまちがえてしまうくらいだった。
ボクは10年以上前にアフリカへ始めて旅行で来て、見上げた星空も凄かったことを思いだした。あのときのボクと同じように、みんなもこの星空を生涯忘れないでまたアフリカに来てくれたらいいなと思う。20日、
2回目の半日サファリドライブへ出かける。
今朝は反対側の保護区であるムシアラ方面へ向かう。
マラ川沿いの森の中で朝食を食べた。
先日、気分の優れなかった女子生徒が「気持ちワルーイ…」と言って食事に口を付けないので心配して話を聞いてもらうと、気持ち悪いのは体調のせいでなく、森の中でほのかに香るヒヒの糞の匂いのせいだった。もともとデリケートな女の子なのだろう。ムシアラ湿原にはゾウ達が群れをなしている。1頭のオスゾウが地面に牙を突き立てて土を掘り起こし、その土を食べている。きっと土からミネラル分を補給しているのだろう。貴重な行動が見られた。
牙で土を掘って食べるオスゾウ
湿原の乾燥しているところには、この辺りをナワバリにしている20頭以上の大きなプライドの休息シーンに出会えた。
草丈が高いので全ての個体が確認できなかった。ときどき何頭かが立ち上がって頭を出してくれると、生徒達が歓喜をあげた。
草原で休息中の大きなプライド
この暑い時間、無理に身体を動かして体力を消耗するよりひたすら動かないことによって無駄なエネルギーの浪費を押さえるライオンの習性を説明した。こんなに無防備にノンビリできるのは、ライオンが「百獣の王」だからというしめくくりを加えた。生徒達は少しずつ疲れてがたまってきたようだ。それはそうだ、全身を使っていつも新しいことの連続なのだから。
朝食後はお腹も満足して、車内でライオンたちと同じように休息態勢に入ってしまった。
車内で器用に寝る男子達
時々窓に頭をぶつけるが、ちっとも起きない
よくもこのサファリドライブの揺れの中で眠れるものだと感心しながら、いつか彼らが大人になってサバンナの風を感じながら心地良く眠ったことを思いだしてくれたらいいなと思った。ゴーチと呼ばれるマサイの所有地あたりまで北上すると、無数のシマウマとヌーの群れが草原を埋め尽くすように押し寄せているのに気付いた。
これは「ロイタ・ポピュレーション」と呼ばれる「小移動」を国内で繰り返す群れだ。千頭以上はいるだろう。
ふだんこの小移動群はマサイマラ北部に住んでいるが、タンザニアからやってくる「大移動」と合流するためにここまで南下してきているのだろう。
やはりヌーの習性は興味深い。