8月のサファリダイヤリー、その2
5日、
[7:28、ムシツヤラウンド]
4頭の若オスライオンの群れが、1頭の大きなバッファローを仕留めて食べていた。
そういえば3日前もこの4頭がバッファローを食べている情報を聞いた。
どうしてこの若オスたちはバッファローばかり狙うのだろう。
考察するに、基本的に若オスたちはメスライオンのように統率の取れた連携プレーで獲物を捕らえるのが下手なのかも知れない。
だから逃げ足の遅い大きなバッファローを狙うのか。
バッファローは足は遅いけどライオンに致命傷を与えるだけの力を持っている。しかし若オスライオン達は力を力でねじ伏せてしまうのかも知れない。なかなかタフだ。
バッファローの肉の側で休む若オスたち
じりじりと近づいてくるハイエナの群れをオスライオンの1頭が追い払った。自分たちで苦労して捕まえた獲物だ、誰にも譲りたくないのだろう。
近くの木の上にはハゲワシが鈴なりになって「順番待ち」をしていた。[8:20、バグダット]
母親と3頭の子供の家族チーターに会った。
始め日光浴をしていたが、それに飽きたのか1頭の子供が緑色の車に近寄っていった。その車はイザベラという白人女性の車だった。イザベラは大のチーター愛好家らしく、毎年この時期になると高いお金を払ってロッジに数週間滞在しながらチーターの写真だけを取っているオバサンだ。
1頭の子供はイザベラの車のボンネットに乗った。四六時中この車はチーターの側にあるので、チーターたちは怖れを忘れ順応したのだ。
そこまでならいいのだが、イザベラは車の窓から手をひらひらと出してチーターを挑発した。そして「私の可愛いベイビー、ルーフにお乗りなさい」と言っていた。
今にも触らんばかりに手を近づけているのでボクは驚いた。
いくらチーターの性格が温和で人間に危害を加えるほどの力を持っていないからといって、野生を手なずけるような行いをして良いのだろうか?
そのうちに別の子供がやってきて、今度はイザベラの車のタイヤに齧り付いて戯れ始めた。
車のタイヤでチーターの戯れる子供たち
するとドライバーは止めさせるようにクラクションを鳴らした。それでも退かないので、イザベラは車内からシートクッションを取り出して「こっちで遊びなさい」と言わんばかりにそれを叩いて見せた。
オバサンがどんなにチーター好きか知らないが、野生動物を飼い犬や猫のようにペット扱いするような態度をボクは好きになれない。[10:00、マハリブラボ]
日中マラ川へ行くと、これから徐々に始まるヌーの川渡りを心待ちにしているかのように大型のクロコダイルが何匹も陸に上がって日光浴していた。
その中でも1匹は手前の岸の側で休息しており良く見えた。そいつは人間を見てもぴくりとも動かず、その5mはあろうかという巨体を横たえじっとしていた。
クロコダイルの口から飛びだす牙がよく見える
[10:30、マハリブラボ]
ケニア内を移動しているヌーの群れ「ロイタポピュレーション」が、川渡りを始めている。
川沿いにすでに渡ってしまった20頭ほどのヌーの群れが、対岸にいる数百頭のヌーが渡って来るのを見ている様子があった。
もしかしたら渡るかも知れない、と、しばらく待ってみるが、対岸で別のサファリカーがヌーの群れを遮るように停車したので諦めた。
渡りたそうにじっと川を見ていたヌー達
[11:00、セレナ]
ブッシュの近くで停車しているドライバーが「下にヘビがいる」と言うので僕らの車を回してみた。
するとブッシュから2mほどの真っ黒いシンリンコブラが現われた。
コブラは素早い動きで草原を舐めるように走り、近くの岩の下に隠れてしまった。6日、
後方で大きな野火が上がっている
ヌー達はまったく気にしない[7:18、ムシアラゲート上]
昨日からナロック州側のパラダイス平原と呼ばれる場所で大規模な野焼きが行われている。
興味深いことに、「ロイタポピュレーション」は煙の方へ向かって移動を始めていた。
野火が去った後、栄養価値のある新しい草の新芽がすぐ生え始めることを動物達は知っているのか。[8:07、ビラシャカ]
「クイーンの娘」と呼ばれるママチーターがサファリカーのルーフの上で休んでいる。その車の下では子供達が日陰を求めて入り込んでいた。
だからこの車はしばらく動かすことができない。
車のルーフでくつろぐ「クイーンの娘」
車内に隠れる観光客
車内にいる観光客は、お茶を飲みながらママチーターが飽きてこの場所を離れるまでのんびりする覚悟があるらしい。
気の毒なのは自分の乗っている車の写真を自分で撮れないことだろう。[10:00、キチャカタツゥ]
この辺りにはヌーとシマウマ、トムソンガゼルが草原一面を覆い尽くすように生活している。そして保護区の境目でもあるので、赤い服を纏ったマサイ族と家畜の牛たちの姿もちらほら見かけた。
この平和すぎる風景を見ていると、ある自然保護家が、
「家畜と野生動物は、1Km以上近づいて生活することができない」
と言っていたのが嘘のような気がしてくる。
現実に、シマウマたちの数十メートルそばを放牧するマサイ族が普通に歩いているのだ。シマウマは警戒することもなく草を食んでいるのをボクは目の当りにしている。
きっと野生動物と人間活動は、共に変わり(順応し)ながら生きていくものなのだろう。パラダイス平原で行われている野火の影響で、マラ・トライアングル方面は煙に覆われて視界が利かないため、夕方もう一度ムシアラ方面へサファリドライブに出かける。
[16:30、ムシアラ池]
40羽ほどのハゲワシの群れを発見した。近づいて確認するとシマウマを食べていた。
付近には5頭のハイエナが休んでいる。ハイエナの顔は血まみれだ。きっと彼らがシマウマをハンティングしたのだろう。
ハゲワシたちの食事風景はいつ見ても壮絶だ。激しく鳴き合い、柔らかくて食べやすそうな肉を奪い合う。翼を広げて身体を大きく見せたり、時には飛び上がって仲間に蹴りをいれたり、鋭い嘴で突きあっている。
1頭のハイエナは食事し足りなかったのか、またシマウマの肉の側にやって来た。ハゲワシたちは無言でさささっと肉から一瞬遠退いた。
ハゲワシたちを追い払おうとするハイエナ
ハイエナは肉にありつくが、またジリジリと肩を怒らせながら近づき取り囲むハゲワシたちに怖れをなしたようで、肉を諦め退散した。
そしてまたハゲワシたちの狂宴が始まった。[15:20、キチャカタトゥ]
ムシアラのプライドが集合していた。
いつもライオンたちは長い草の中にいるので正確な群れの個体数が分からなかったが、今日は水のある石場の上で休息していたので頭数を調べてみる。22頭だと思っていたが、なんと24頭もいた。
岩の上にプライドが勢ぞろいした