9月のサファリダイアリー、その3へ

11日の続き、

[11:33、マジヤプンダ]
この場所はシマウマが好んで砂浴びをする。砂の質が細かくて身体を擦るのに都合が良いのだろうか。
一見するとまるで身体を汚す行為に観えるが、自分の口の届かない部位の古い角質を取ったりしている、いわば美容の行為だ。

[12:00]
シエニのプライドのメスライオンはもっか発情期間中だ。
10分間ほど観ていると交尾を始めた。交尾が済むと暑苦しそうに2頭とも寝そべった。
2頭とも身体がガリガリに痩せていた。発情期間の1〜2週間は何も口にしないで子作りに励むというが、本当らしい。

暑さに耐えながら交尾をする


どんな動物にも「食欲・睡眠欲・性欲」という本能があるが、ライオンはこの発情期間中、性欲のみの生き物になるようだ。他の欲に打ち勝って繁殖行動に専念すべく、交尾をせずにはいられなくなるのか。

12日、

早朝は比較的元気よく交尾を繰り返す

[7:40、マジヤンデゲ]
今朝もシエニのハネムーナーが交尾をしている。
交尾が終わるとメスはひっくり返りじっとする。オスは気持ち良さそうに伸びをした。
僕らがサファリドライブで観察するほんの数十分の間に1度は交尾をするのだから1日に何十回も交尾をしているのだろう。プライドのオスはそうとうタフでなければいけない。

[8:33、コーナマローリ]
ざっと2千頭ほどのヌーの群れが行列を作って移動している。壮観だ。
でも進行方向はタンザニア方面だった。まさかもう帰ってしまうのだろうか。

[8:38、バグダット]
4頭の若オスライオン軍に会う。
昨晩より明け方にかけて食事をしたようだ。みんな腹が膨れている。1頭は草むらの中で何かを齧っている。観るとヌーの頭だった。

ヌーの頭にかじりつく欲張りな若オス



[8:52、マジヤエジプシャン]
先月一斉に生まれたトムソンガゼルの子供たちが大きくなってきた。
もうじっと動かないでいる時期を終え、親達と一緒に行動を始めたようだ。そうなると子供たちだけ集まって「幼稚園」を作るようになる。
生まれた子供たちのいくつかはチーターやハイエナ、ジャッカルに捕食されてしまう。でも誰かが犠牲になるお陰で同じ種の誰かが今日を生き残ることができる。生物界は良くできたバランスで保たれていると感心する。

[10:21、コーナマローリー]
片角の折れたトムソンガゼルのオスがいた。
角はまだ折れたばかりのようで根元で少しだけつながり、ぶら下がっていた。

折れた片ヅノをぶら下げるトムソンガゼルのオス


きっとオス同士の力争いで誤って折ってしまったのだろう。ウシの仲間であるトムソンガゼルの角の中には頭がい骨が入っていて、一度折れたらシカのように生え変わることが無い。だからこのオスはこれから一生片角で生活しなければいけない。片角ではもうオス同士の力比べに勝てないので繁殖する機会が得られないかも知れない。
目元にぶら下がる折れた片角を邪魔そうにぶら下げながら、そのオスは1頭とぼとぼとと歩き続けていた。

トピは何故「トッピング」するのか?

[10:49、セレナ]
トピはよくアリ塚の上に登ってじっとしている。ボクはこの行為を冗談交じりに「トッピング」と呼んでいるが、少し真面目になぜアリ塚の上に登るのか考えてみた。
1) 自己主張:身体を大きく見せることによってナワバリを誇示する。自分の存在を異性にアピールしている。
2) 見張り:遠くまで見晴らすことで狙う肉食獣を逸早く見つける。
3) 好きだから:単純に高いところが好き。なんとなく気持ちが良い。

[11:00、セレナ]
今日もマラ川沿いで川渡りの気配がある。ヌーの頭数は500頭ほどだった。
しかし今回も気配だけで僕らは1時間待って諦めた。やはりそう簡単に観れるものではない。
ヌーがよく川を渡るのは、本当に暑い3〜4時ごろが多いようだ。

川渡りをするために川の様子を窺うヌーたちと、川渡りを観るためにヌーの様子を窺う観光客

13日、
昨夜の雨で泥濘が多くなる。

立ったまま寝ているゾウの群れ

[7:02、デリシャ前]
じっとかたまって動かないゾウの群れがいる。
よく見るとみんな目をつぶって立ったまま寝ていた。ゾウ達はオシクラマンジュウをするようにお互いの体重を他人に預け、微睡んでいる。
しばらくするとようやく目が覚めたのか、ほとんど無意識のようにゆっくりと辺りの草を食べ始めた。

ヌーの死体をくわえるオスと、後で様子を窺うメス

[8:16、コムチェゾ]
昨日まで交尾に励んでいたシエニのハネムーナーが、ヌーを食べていた。
もう発情期間が終わったのかと思ったら、このヌーは同じシエニのプライドの別のメスライオンが仕留めた食べ残しだと聞いた。
労力を使わずして食料が得られるなら、発情期間中でも食事をするのだ。このときばかりは性欲より食欲が勝るのだろう。
お腹一杯になったオスは奇妙な行動を取り始めた。獲物の周りの地面を前脚で齧り始めたのだ。
立ち位置を変えては何度もばりばり地面を掘る。どうやら肉を隠したい衝動にかられているようだ。でもあまりに大きいヌーの死体はどうしても隠れない。

前脚で必死に死体を隠そうとするオス


ライオンが犬や猫のように肉を隠すとは知らなかった。普通、百獣の王であるライオンは誰かに獲物を盗られたりしないので、隠すような行為はしないはず。隠す行為をしなければいけないということは、やはりこのオスは肉を食べることより交尾に専念したい気持ちがあるからではないだろうか。

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