9月のサファリダイアリー、その5
26日、
一週間ほどマサイマラを離れている間、雨が降らなかったらしい。
以前とは打ってかわり、何処を眺めても煤けた草原が広がっている。
思ったのは、新芽の草は雨が降らないといとも簡単に枯れてしまうことだ。
マサイ族は乾季の終わりに草原に火を放つ。しかし一歩間違えて雨が降らないと、焼けた大地の栄養分は風の侵食で流され、砂漠になってしまうのではないだろうか。
伝統的にずっと昔から野火を行っているとはいえ、それはかなりリスキーな業に思える。[16:16,ムシアラゲート]
BBCの動物撮影隊が来ているので、このエリアでライオンを探すのは容易い。
「BIGCAT」と書いてある車を探せば、そこにライオンかチーターがいるのだから。
1台のBIGCAT車を見つけたので、撮影の邪魔をしないように近づく。そこにはメスライオンが一頭だけ微睡んでいた。
そのBIGCAT車には撮影隊は乗っていなかった。無線を持ったドライバーのみが待機していた。なにか出来事が起きたら無線で連絡して撮影隊がやって来るという。
ドライバーの情報によると、プライドの他のライオンたちは2Kmほど離れた場所にいるらしい。
そしてここにはメスライオン1頭しかいない、と言っていた。
[15:52、ムシアラスワンプ]
湿原にまだ生まれてまもないと見られるゾウの赤ちゃんを連れた30頭ほどの群に出会った。
赤ちゃんの耳の後は、まだ柔らかそうなピンク色をしていた。[17:15、ビラシャカ]
この辺りを支配する大所帯ライオンのボスである「ソロー」と、その息子「パラオ」がアリ塚の上で寝ていた。
そこから400mほど先の草原で、家族であるメスとその子供たちがいた。数えると18頭いるようだった。
メスライオンの一頭が、忍び歩きを始めた。離れたところに佇んでいるハーテビーストを狙っているようだ。
じりじりと近づいていったが、結局ハーテビーストの周りにいたトムソンガゼルに気づかれてしまい失敗に終わった。
生後間もない赤ちゃんをくわえて移動する
[18:16、ムシアラ]
帰り道の途中で、プライドの場所へ移動していると思われるメスライオンに会った。どうもこのメスライオンは最初に見かけた1頭で微睡んでいたメスライオンのようだ。
そして驚いたことに、そのメスライオンは生まれて1週間ほどだろうと思われる小さな赤ちゃんを口にくわえていた。
道路の脇に停めた僕らの車のそばを通りすぎていく。
赤ちゃんは頭を優しくくわえられ、なすがままになっていた。
今回赤ちゃんはこの1頭しか見られなかったけど、もしかしたらまだいるのかも知れない。全部で24頭だと思っていたプライドのメンバーがまた増えたことになる。すごい大所帯だ。後から考えると、BIGCATのドライバーはこの赤ちゃんのことを知っていたのかも知れない。でも僕らの車が赤ちゃんにストレスを与えたり、場合によっては草を押し倒して轢き殺してしまうことを恐れて教えなかったのだろう。
もしボクがBIGCATのドライバーと同じ立場だったら、やはり同じことをしていたはずだ。27日、
[6:44、アウト下]
「木登り好きメスライオン」と最近このあたりを周回する若いオスライオンがバッファローを食べている。
このバッファローは昨日メスライオンが仕留めたと聞いている。この木登り好きメスライオンはいつも一頭なのにハンティングが上手い。それを若オスライオンが横取りしたのだろうか。
以前この若オスライオンは「隠れキャラ的」な存在でめったに見かけることはなかったが、徐々に車に慣れてきたようで頻繁に見かけるようになった。
この木登り好きメスライオンと若オスライオンがつがうようになって2ヶ月が過ぎた。本来のなわばりのボスであるシエニの兄弟オスライオンはそのことを知っているのだろうか。
マラ川のよどみに溜まるヌーの水死体と、ハゲワシ
[11:22、セレナ]
最近雨が降らないので乾燥化が進み、あんなに青々としていたセレナ付近のマラ川沿いの草原は埃にまみれている。ヌーの川渡りのポイントには、ヌーの1頭も見かけなかった。
かわりに無数のハゲワシが舞う。近づくと悪臭が漂った。
マラ川のよどみには30体ほどのヌーの水死体が腐乱している。クロコダイルたちも食べきれないようだ。ワニなのにまるでカエルのように腹が膨れ飽食していた。[11:58、セレナスワンプ]
こんなところでチーターの「ダンディ」に会うとは思わなかった。彼の行動範囲は本当に広いことを知る。
へこんだ腹部が影になって目立った。ずいぶんお腹を空かしているようだ。
腹をすかしたダンディはすこし哀愁がある
いつも凛々しいダンディなのに今日はあんまり気持ちに余裕がないように見える。僕らの車に見向きもしないで獲物を探してどんどん移動していった。