10月、定住の地を立ち退いた遊牧民マサイ
休暇でしばらくマサイマラを不在している間に、大きな出来事があった。
保護区のオロオロロゲート付近に定住していたマサイ族が、武装警察によって立ち退きさせられたのだ。
ボクがその場所を訪れたときには人独り、山羊一匹さえおらず、取り壊された無残な建築物だけが山積みになっていた。
なんにも無くなってしまったベンの集落跡
立ち退きさせられた場所には、僕らのロッジが「マサイ村訪問ツアー」でお世話になっている「ベンの集落」も含まれていた。
丘の上に立つベンの集落と僕らのロッジの付き合いは長かった。ボクがマサイマラで生活するようになって、始めてマサイ族との交流の接点となる場所にもなった。
家畜が財産として、その世話が中心となる生活を送る遊牧民マサイ。しかし今では子供を学校に行かせたり、診療所で治療を受けたり、ママたちは服を買うために現金が必要だ。現金収入を得る手段としては家畜を売るか、観光産業に従事するかのどちらかになる。ベンの村は保護区のすぐそばという立地条件を生かして観光客に開放し、文化交流の橋渡し的存在だったのだ。そんな彼らの土地が別の誰かの所有地だっだとは思いもよらなかった。
本来、新しい草を求めて転々と生活拠点を移動するマサイ族だが、今ではそんなふうに移動できる場所がどんどん無くなってきており定住する傾向にあるという。
だから100人以上住んでいるベンの集落は、もちろん彼らの土地であると疑わなかった。
彼らがどんな気持ちでこの場所を去ったのか、ボクにはわからない。きっと誰にでも住んでいた土地に愛着が出るだろう。あの集落で生まれた子供たちは突然の立ち退きに、どのような気持ちでいるのだろうか。
話によると、今彼らは一番近い村があるオロオロロの丘の上に移り住んでいるという。その場所へは僕の生活の中では行かない場所だ。ボクはまだみんなに会っていないでいる。
破壊された不法建築のバー
みんなの憩いの場所だったその場所を通過するたびに、以前なら気さくに手を振ってくれたマサイの友人達の姿を思いだす。いつも木の下でおしゃべりに興じている長老達の姿がとても好きだった。なんだか寂しいものだ。
そして1週間もすると、マサイの集落があった場所はシマウマやキリンの徘徊する野生の環境になっていた。
●マサイ交流日誌へ戻る