12月のサファリダイアリー、その2
6日、
[6:15、オロオロロ上]
僕らのロッジがあるオロオロロの丘の上まで大移動中のヌーとシマウマが上がってきた。昨年はここまで辿り着く前にタンザニアへ帰国してしまった。でも2年前、3年前はこんな感じで丘の上までやって来ていたのを憶えている。
それにしても、未だに大移動群が北上しているなんて考えられないことだ。例年を基準にすると遅すぎる。おそらく世界的な気候変化によるものだろう。
ドライバーズシートの窓越しに、こちらを眺めるオスゾウ
[6:35,オロオロロ下]
立派な牙を持つオスゾウが3頭、山の上から降りてきた。
1頭のオスゾウは普段あまり食べることの無いミントの葉を食べている。マサイ族は消化促進剤として葉を利用することがある。ゾウにも同じ効果があるのだろうか。[7:45、コムチェゾ]
サファリカーはライオンやチーターをいつものように探すが、今朝は誰も見つけることができなかった。
野焼きした草原は連日降るスコールによって緑が増した。チーターが好んで生活する草丈が短い草原は、何処からやって来たのか無数のトムソンガゼルで埋め尽くされていた。まるで「トムソンガゼル天国」だ。[8:00]
帰りがけ、ゲストがトムソンガゼルの赤ちゃんを見つけたので車を止めた。あまりに小さくて石のようだったのでドライバーは気付かずに脇を通りすぎてしまったのだ。
接近して驚いた。トムソンガゼルの赤ちゃんの身体には、まだ胎盤が張り付いていてヌルヌルと光ってた。産み落とされて数分も経っていないと思われた。
まだ背中に胎盤がくっついている生まれたばかりのトムソンガゼル
まだ立ち上がることもできず、首だけ持ち上げてキョロキョロしている。本能で母親を探そうとしているのだろう。
赤ちゃんにとって始めて観るサバンナの世界。無神経に近づいてしまった僕らの車をどう思ったのだろう。
僕らは少し離れたところで母親がやってくるのを待ってみた。遠くでこちらを見ているトムソンガゼルのメスがいる。あれが母親だろうか。まだ車を警戒しているようなので、僕らはこの場を後にした。
早朝は快晴だったが、タンザニア方面で見えていた大きな積乱雲が気になっていた。雲の下では雷も光っている。
そしてマサイマラで珍しく昼間から雨が降った。朝のサファリでライオンを探しきれなかったので、午後のサファリではマラ川対岸のムシアラ湿原へ向かった。
[16:10、ムシアラスワンプ]
青々茂ると湿原の草中に食べられたシマウマが見えた。その側にメスライオンがいた。メスライオンは2頭の子供を連れている。以前、口にくわえて移動していた子供たちだ。あの頃に比べるとずいぶんと大きくなった。この辺りにもまだまだ動物大移動群がいるので獲物には困っていないのだろう。
わかりにくいけど、メスの両わきに子供たちがこちらを見ている
[16:30]
湿原の周辺をぐるっとまわった所で、このエリアのプライドの1頭である「パラオ」に会った。お腹を一杯にして寝ている。先程のシマウマを一緒に食べたのだろう。パラオは父親であるこのプライドのボス「ソロー」と仲が良いので、何処か周辺にいるのでは、と探してみたが見つからない。湿原の奥深くに隠れているのかも知れない。
満足そうに眠るパラオ
[16:40]
50頭ほどのゾウの群れが、湿原へ向かって悠々と歩いてた。ゾウは草を食べながら、湿原に点在している林をすり抜ける。この辺りで林を造るグリーンハートの樹は高木なので、その中に入るとゾウも小さく観えた。
グリーンハートの林を抜けるゾウの群れ
ゾウの群れが通りすぎると、グリーンハートの木の下からライオンの顔がヒョッコリ現れた。どうやらゾウの群れが通りすぎるのを、じっと隠れてやり過ごしていたようだ。
近づくとそこには3頭のオトナメスと、この群れの主である「ソロー」がいた。全部で26頭という大所帯プライドのボスでもゾウの群れには敵わないのを知っているらしい。
ライオンたちはゾウの群れが通りすぎたのを見てほっとして、また睡眠を貪り始めた。
左上で、メスのお腹に後ろ足を乗せて眠るのがボスのソロー
[17:18、パラダイス]
岩の多い草原にハイエナの群れが休んでいる。2頭の子供たちが鳴いて母親にお乳をせがんでいた。母親が横たわると、子供たちはおっぱいにしがみついた。しかし母親はミルクを与える気があったわけではないらしく、お腹にまとわりつく子供を後ろ足で蹴飛ばしてしまった。
なかなか子供に厳しい母ハイエナだ。
8日、
[6:39,オロオロロゲート]
大移動群はさらに北上し、保護区とマサイ族の土地の間を、行ったり来たりするようになった。
ヌーたちの行列はオロオロロの丘より下ってきて道路を横切り、さらに草原へと続いていた。1000頭以上いるだろう。
[6:42、アウトオブアフリカ下]
この周辺をナワバリにしている兄弟オスライオンの1頭が、群れのメスを1頭だけ連れてハネムーンに出ていた。
サファリカーが4台ほど並んでいたが、それを気にせずに交尾を始めた。朝の涼しい時間は、オスもメスも積極的に交尾を繰り返すようだ。
交尾が終わってメスがひっくり返るところ
[7:05、ニェウシ]
めったに出会えないヨコスジジャッカルが1匹いた。セグロジャッカルより少し大きい。
僕らの車が止まると、慌てて逃げ出してしまった。[8:08、シエニ前]
夜行性でこちらもめったに出会えないサーバルキャットがいた。
僕らの車が接近すると、小さな茂みの中へ隠れてしまった。ドライバーに言われてよ〜く観ると、草むらの中からサーバルキャットの小さなお尻だけが見えた。
よく観ると、縞模様の入ったサーバルのお尻が見える
この草むらは潜り込むほど大きくなかったので、身体を小さく丸めて石のようにじっとしていただけのようだ。身体の模様が見事にカモフラージュを果たしている。ときどき見つけたサーバルキャットが、フトした瞬間に消えていなくなることがある。なるほどこういう方法だったのか。[8:14、シエニ]
先程ハネムーン中のライオンのプライドを見たが、他の仲間はちょっと離れたところで食事中だった。
食べられているのはトピだった。トピの肉は獣臭が強い。ライオンが獲物を動かす度に匂いが車内まで漂ってきた。
トピの肉をくわえるメスライオン
ゲストの女性が食事中のライオンを観て「えげつない」と言った。
ボクは思わず、「人間だって他の生き物を殺して食べてます」と返してしまった。
ライオンも、ナイフとフォークを使って食べれば「上品」に見えるだろうか。