ギラレ・アンチポーチングポスト

[ギラレ、8:30]
天候が落ち着いたので、サファリカーを借りきってサファリへ出かける。
最近ボクの気になっていいる場所「ギラレ」へ向かう。この場所は一番西の外れ、南のタンザニア国境側だ。ドライバーはあまり乗り気でない。彼曰く、ギラレには密猟者がわんさといてサファリカーも狙われるらしい。


ギラレに入るとアカシアの花が満開で、甘酸っぱい芳香が充満していた。ギラレ地域はマラトライアングルの風景を代表する「バラニテスの点在する草原」ではなく、みごとな「アカシアの森」を形成する。森の中はいくぶんヒンヤリとしていて多種の鳥が木から飛び立つ。とくに猛禽類の巣営地があるようで、ソウゲンワシやトビ、ミサゴなどが確認できた。


南へ向かうと、右手側にオロオロロ崖がほぼ垂直に迫っている。崖から落ちてきたのだろう、大きな岩が森の中に埋もれている。こういう場所にはヒョウが生息するに違いない。ボクは何度も車を停めてもらい、双眼鏡でヒョウの生活する形跡を探した。

進むと、水が激しく打付ける音が聞こえた。見るとオロオロロの崖の上から水が流れ落ち、滝を作っている。滝を見るのは久しぶりだった。途中段差がついているが高低差は100m以上あるだろう。ここがロッジからもっと近い場所だったら、観光ポイントに一つになりうるだろう。


しばらく南に向かう道をさらに進むと、巨大な城壁と大きな門が現われた。ここが「ギラレ・アンチポーチング・ポスト」と呼ばれる、密猟者を取り締まる、レンジャー達の詰め所だ。以前ボクはここを訪れたことがあるので、同じメンバー達から歓迎を受ける。



城壁の中に入れてもらう。中は広く整備されており、6つの家が建ち10人のレンジャーが住んでいる。
基本的にお喋り好きで人の良いケニア人レンジャー達と雑談を交わしながら、色々なことを質問してみた。ボクはそもそもレンジャーになりたくてアフリカ留学した経歴があるので、実際に密猟者を取り締まる彼らの生活に非常に興味を持っていた。
ボク「ここでの生活はどうだい」
「悪くないよ。この場所は見ての通りとても素敵なところだ」
確かにこの施設の側には奇麗な小川も流れるし、緑も豊かで居心地良さそうだ。ただし施設には電気がないらしい。
ボク「パトロールはどうやって行うの?」
「この一帯はタンザニアからやって来る密猟者建ちの通り道になっているんだ。私たちは歩きながら彼らの歩いた形跡がないか毎日調べているんだ」
レンジャー「この建物のから少し南に行けばタンザニアのセレンゲティ国立公園だ。そこにはタナパ(Tanzania National Parks)で働く私たちと同じ密猟取り締まり部隊がいる。彼らは車を持っているので時々一緒に合同調査を行う」
ボク「密猟者は銃を携帯しているの?」
レンジャー「いいや。彼らは銃を使わない。罠を仕掛けたり、槍で動物を仕留めるんだ。銃の音がすればすぐ我々に気づかれてしまうだろうしね」
ボク「罠とはどんなもの?」
「太いワイヤーを使うんだ。薮の中には動物の通り道があるのでそこに仕掛けるのさ。もちろん私たちが見ればすぐにわかるけどね」
「もう去年だけで500個は押収したかな。密猟者は100人以上逮捕したよ」
ボク「逮捕された密猟者はどうなるの?」
「キシィ(ここから3時間くらい車で行った一番大きな街)の警察署まで連行する。留置所へ入れられるか罰金を払って釈放されるだろう」
「タンザニアはもっと規制が厳しい。あちらで掴まった密猟者は2年間刑務所に入れられるそうだ。だからケニア側に逃げてくる犯罪者も多いよ」
ボク「話は変わるけど、レンジャーの勤務態勢はどうなっているの?」
「我々はマラコンサーバンシーのスタッフとして働いているので、定期的に勤務先が変わるんだ。ここでの仕事は6カ月したら移動だ」
「休みの日は近くの町まで行くよ。このオロオロロの崖を登っていく道があって、30分も歩けばナイガダという部落さ」
オロオロロの崖は保護区と私有地の境界線になっている。崖を登ってしまうとすぐにトウモロコシ畑が広がっているという。農耕民族の所有地だ。そんなに人間活動と保護区が密接しているなんて驚いた。

ボクは彼らの陽気さと仕事に対する誇りが好きだ。保護区で僕らが安全で楽しいサファリが出来る。その陰には、彼らの地道な活躍が支えているのだ。
また来るというと、彼らはテントを持ってゆっくり滞在するといい、と声をかけてくれた。是非一度そうしてみたいものだ。

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